塾屋の授業技術(高校数学メイン)

塾で20年以上働いた塾屋が、高校数学メインにつぶやきます。

No.004 例題の数字作りについてのちょっとした注意点

皆さん、こんにちは。塾屋です。

今回は、例題の数字作りについてのちょっとした注意点です。話しを簡単にするために、受験算数の範囲ですが「つるかめ算」の話をします。
「つるとかめが合わせて10匹います。足の本数は28本です。つるとかめはそれぞれ何匹いますか」という問題で、計算は次のように進みます。
 (ア) まず、全部がつるだとすると 2×10=20 本
 (イ) つるを1匹かめに取り換えると、足は 4-2=2 本増える。
 (ウ) (28-20)÷2=4 より、かめは4匹
2 という数字が被るために、生徒とのやり取りの中で、2 がつるの足の本数を表すのか、かめの足-つるの足を表すのかが不明瞭になります。最悪の場合、解法を誤解する可能性もあります。
例題を構成するときには、こういったことにも留意するようにしましょう。

No.003 教科書・テキストの例題をそのまま扱う授業技術(プリント不使用)

皆さん、こんにちは。塾屋です。

今回は、教科書orテキストの例題をそのまま扱う授業技術についてです。例題をすべて書き込みプリントにして配っている教師は私の周りにも多く、話を聞くといろいろな理由が返ってきます。その中の大きなものとしては

「例題をそのまま扱うと、教科書をカンニングされてしまい、授業がグダる」

というものがあります。この事態は、授業技術の向上により改善できます。

<技術1:問題の要約を板書し、その要約をもとに解説する>
例えば、「男子3人と女子4人が一列に並ぶ。・・・」という例題を説明するときは、まずは「B1 B2 B3 G1 G2 G3 G4」と板書します(もちろん、人は区別することは口頭で話します)。そして、その後の説明で問題の設定を確認するときには、板書を指して確認します。こういうことを繰り返すと、生徒は問題文を要約したものをもとに考える習慣がつきますし、例題の説明中に何度も教科書に視線を落とすことがなくなります。塾屋の授業進行で多いのは、(1)よりも(2)、(3)、(4)はどんどん説明を端折っていき、(4)はヒントだけ言ってから「続きは自分でやってごらん。」と生徒に投げて、黒板には「解けたら教科書を見て丸つけをし、できたら○○をやる」と書きます。単純なことなんですが、効果は高いので是非お試しあれ。

<技術2:例題の問題はそのまま使うが、解説には工夫を凝らす>
例題の解説を、教科書通りに写していたらグダるのは当たり前です。無駄なプリントを作成しない分、解説には最大限の工夫をしましょう。問題を理解するための実験を一緒に行う、別解を盛り込む、そもそも教科書の解説が気に食わない場合は別の解法を推すなどです。そもそも、教科書をそのまま読んでわかるなら苦労はないわけですから。それにプラスアルファをしていくことが教師の力の見せ所です。

<技術3:適当に改題する・追加する>
例題を教えただけでは、その後の演習には不足が発生することがままあります。また、例題の数字が適当でない場合もあります(これについては次回の記事で書きます)。そういったときには、適当に改題・追加しましょう。これを頻繁にやっていると、カンニングする生徒は減っていきます。

例題をすべて書き込みプリントにしていると、いつまでたっても授業準備に手間がかかりますし、しかもプリントのリニューアルをやめると、授業内容が固定されて進歩がなくなります。ぜひ例題をそのまま扱う授業技術を身につけましょう!

No.002 筆記速度も学力のうち②

皆さん、こんにちは。塾屋です。「筆記速度も学力のうち」の続きです。

で、塾屋が何を憂いているかというと「書き込みサブノート授業」です。「書き込みサブノート授業」は、塾屋は基本的には推奨しません。その理由は次の通りです。

(1) 作成の手間がかかる。
(2) プリントの保管が面倒。
(3) 筆記速度の向上の圧力がない。
(4) 「教科書orテキストの例題をそのまま扱う」という教師側のスキルが育たない。

(1)から話します。書き込み式プリントは、いくらでも工夫できます。が、その労力を使うくらいなら、予習や授業計画に回したほうがいいと思います。あと、指導的立場にいる教師は、若い教師に書き込み式プリントを薦めたりすると、その教師の労働がブラック化して、つぶれる原因にもなりかねません!

(2)ですが、自分も若いころはプリントをよく使っていたのですが、生徒に保管させるのが難しいと悟り、配るプリントは基本「使い捨て」のつもりで配っています。どうしても保管させたいものは、冊子にして配るべきでしょう。

(3)は当たり前で、写す時間を稼ぐために書き込みプリントにしているわけなので、生徒の筆記速度は向上しませんよね。

(4)については、授業技術の根幹に関係することなので、次の記事にします。


あと、気になるのは「映像授業」の影響です。はっきり言いますが、ちゃんとしたライブ授業に、映像授業はかなうはずがないんです。ところが、ライブ授業を行う教師のスキルが不足しているがために、映像授業の価値が相対的に高まっている、というのが現状なんです。で、最近、スタディサプリの映像授業の利用を高校が呼びかける、という話を聞くんですが、これはつまり自分の高校のライブ授業がダメだ、と言っていることに他ならず、開いた口が塞がりません。
もちろん、映像には「電車内でも使える」「繰り返し使える」などのメリットはありますが、筆記速度の向上に関してはマイナスです。映像をメインにするのは、特に数学では危ないと感じます。

No.001 筆記速度も学力のうち①

皆さん、こんにちは。塾屋です。

このブログでは、数学を楽しく教えるための情報を発信していきたいと思います。

このブログを始めたきっかけについて話します。塾をやっているといろいろな高校や他塾の授業の情報が入ってきます。で、「ああ、〇〇の先生は頑張っているな」ということもありますが、どちらかというと「先生、聞いて下さい。〇〇の先生は・・・」という残念な情報がとても多いんです。まあもちろん、生徒たちは塾屋に気を使っているのでしょうが、それを差し引いても多いんですよ。

さて、残念な授業は、なぜ起きるのでしょうか。ざっくり、次の3つに分類してみます。
(1) そもそも、問題が起きていることに本人が気づいていない。
(2) 授業技術の向上意欲がない。
(3) 授業技術の向上意欲はあるが、時間がなく改善行動がとれない。または情報のソースがない。

(1)、(2)の方は、こういうブログを読まないと思いますから、(3)の方を対象の中心に綴っていくことにします。もちろん、このブログで刺激を受けた(1)、(2)の方が(3)に変わるのであれば、それは重畳極まりないことですが。

挨拶は以上として、本題です。

「筆記速度も学力のうち」と書きましたが、このタイトルを見てピンと来ている人はそれなりの猛者と言えます。というのも、筆記速度の重要性を甘く見ている教師が年々増えているからです。

数学は、すべての教科で最も筆記量が要求されます。よって、数学力を涵養していくには筆記速度が非常に重要になります。実際、偏差値60の生徒と偏差値40の生徒では、筆記速度が倍以上違います。誤解しないでほしいのは、この筆記速度というのは問題を解く速さのことではないですよ。単純な、ノートを写す作業においてのことです。

これ、当たり前と言えば当たり前のことなんですよね。筆記速度が速ければ、単位時間当たりの学習量は増えます。それが増えれば学力は必然として高まりますからね。また、学習量が増えれば、筆記速度も鍛えられていきますからね。筆記速度とは、学習を進めていくうえでの基礎体力なんです。

こういう「当たり前」が、今は全く流行りません。でも、本来、勉強って泥臭いものですよね。流行っていることが正しいわけではありませんし。

まだ筆記速度については書きたいことがあるのですが、長くなったので次に行きます。